生活習慣病とは
過食や偏食、運動不足など生活習慣の不摂生が原因で起こる慢性疾患が生活習慣病です。 代表的な疾患として糖尿病をはじめ、高血圧、脂質異常症(高脂血症)高尿酸血症(痛風)などがあります。
近年、我が国の死亡原因として上位には心臓病と脳血管疾患があげられます。これらの疾患は、糖尿病、高血圧、脂質異常症(高脂血症)高尿酸血症(痛風)などによって起こると言われています。
つまり、生活習慣病は生命に関わる病気なのです。一番の予防対策は生活習慣の改善です。
日頃の生活習慣を見直すことで心臓病(狭心症、心筋梗塞など)や脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)のリスクを減らすことができます。
生活習慣病とは具体的にどんな病気?
肥満
肥満は過食などの食生活の乱れや、運動不足が原因となって引き起こされます。動くと息切れがする、腰や膝の関節が痛む、などの障害が現れ、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の原因となることもあります。
さらに腹腔内に脂肪が蓄積する内臓脂肪型肥満は、内臓脂肪から多くの生理活性物質が分泌され、インスリン抵抗性を悪化させたり、血圧を上昇させたりするなど、健康に様々な悪影響を及ぼしてしまいます。
この内臓脂肪型肥満に、高血圧や脂質代謝異常、高血糖が組み合わさった状態を「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」と呼びます。高血圧症や脂質異常症、糖尿病等を併発して、さらに動脈硬化などを引き起こし脳梗塞や心筋梗塞などの要因となります。
糖尿病(Ⅱ型)
主に遺伝要因であるものをⅠ型糖尿病、生活習慣に起因するものをⅡ型糖尿病といいます。Ⅱ型糖尿病は「肥満」などが要因となり、糖を体に取り込むインスリンというホルモンが上手く働かない「インスリン抵抗性」が生じることで、血糖値の高い状態が続くものです。
高血糖の状態が続くと、血液中のタンパク質と結びつき、糖化して有害物質となり、血管を老化させるなど、ダメージを与えてしまいます。これが全身の大小の血管で起こり、大きな血管である動脈では、動脈硬化が促進され、様々な脳疾患や心疾患を引き起こします。
微細な血管が障害されると、糖尿病の三大合併症である、失明の危険性が高い「糖尿病網膜症」、重症化すると人工透析も必要となる「糖尿病腎症」、足などに壊死を引き起こし、最悪の場合、切断などの処置も必要になってしまう「糖尿病神経障害」のリスクが高まります。
高血圧症
偏った食生活、特に塩分の摂り過ぎによって引き起こされます。摂り過ぎた塩分を薄めるために水分が蓄積し、血流量が増加することで血圧が上昇してしまいます。また喫煙も、タール・ニコチン・一酸化炭素が体内に入り、全身の血管が収縮するため、高血圧になりやすくなります。
血圧とは心臓から送り出された血液が、動脈の内壁を押す力のことで、この圧力が高い状態が続くことを高血圧症といいます。血圧が高い状態が続くと、血管は次第に硬く、内側に厚くなっていきます。これが動脈硬化で、脳疾患や心疾患の要因となるものです。
動脈硬化で血管の弾力が失われると、血管は傷つきやすくなります。そこにコレステロールなどのプラークが付着しやすくなり、血管がさらに狭まって、血圧が上がるという悪循環に陥ってしまいます。
脂質異常症(高脂血症)
動物性脂肪の摂り過ぎなど偏った食生活により、血液中のコレステロールや中性脂肪の濃度が、正常範囲から逸脱してしまう病気です。以前は高脂血症と呼ばれていましたが、HDL(善玉)コレステロールが低い状態も異常であるため、現在は脂質異常症と呼ばれています。
LDL(悪玉)コレステロールは体の隅々までコレステロールを運び、HDL(善玉)コレステロールは体に余ったコレステロールを回収します。このバランスが崩れると、脂質代謝異常を引き起こします。中性脂肪(トリグリセライド)が過剰になると肥満を引き起こします。
脂質異常が続くと血管の壁にコレステロール等の脂質がくっつくことで血管の内径が狭窄し、高血圧および動脈硬化を促進してしまいます。また糖尿病があると血中の中性脂肪もさらに増えるなどし、動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞のリスクがさらに高まります。
高尿酸値症(痛風)
尿酸とは、プリン体という人のエネルギーとなる物質を分解したときや、細胞の新陳代謝の際に産出されるものです。レバーや煮干し、鰹節、白子、ビールなど、プリン体を多く含む飲食物の過剰摂取などで、血液中の尿酸値が高い状態が続くと、高尿酸値症と診断されます。
尿酸は水に溶けにくく、血液中に溜まっていくと、次第に針状に結晶化していきます。それが関節(特に足の親指の付け根など)に蓄積すると、炎症反応が起こり、激痛を招きます。これが「痛風」です。風にあたっても痛い、ということから、この名で呼ばれています。
ちなみに高尿酸血症は、男性と女性を比べてみると、9:1と、圧倒的に男性に多い病気です。これは女性ホルモンに腎臓から尿酸の排泄を促進する働きがあるためと考えられており、女性ホルモンの分泌が減少していく50歳以上では、男女差が少し縮まる傾向にあります。
脳卒中
「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」等を総称して脳卒中といいます。動脈硬化が進むと、脳動脈においても狭窄や閉塞が起こり、脳の神経細胞に血液が供給されなくなって。障害が発生するのが「脳梗塞」です。
さらに高血圧などが原因で、動脈硬化で弱くなっている脳動脈が破れて血があふれ、脳神経が障害されてしまうのが「脳出血」です。また「くも膜下出血」は、動脈硬化などによってできた脳動脈瘤が破裂し、脳の表面を覆う「くも膜」の内側に出血が広がるものです。
どれも命に関わる重篤な症状を引き起こす病気で、命が助かったとしても、後遺症が残った場合、大きく生活の質を低下させてしまう危険がありますので、日ごろから生活習慣の改善を図り、特に喫煙は血圧を高めてしまうので、禁煙することをお勧めします。
狭心症・心筋梗塞
心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を運ぶ冠動脈が、競作して血流が悪くなると「狭心症」が引き起こされます。さらに病状が進んで血管が詰まり、血流が途絶え、心筋が壊死してしまう(梗塞)ことで起こるのが「心筋梗塞」です。
狭心症や心筋梗塞では胸部に痛みや圧迫感を伴います。特に心筋梗塞では強い痛みや締め付けられる感覚が現れますので、至急、救急車を呼ぶ必要があります。早期に治療を行えば、心筋梗塞でも壊死の範囲を小さく抑えることが可能です。
冠動脈が狭窄したり、詰まってしまう大きな原因となるのは動脈硬化です。狭心症、心筋梗塞の予防には、食生活の見直しや禁煙など、生活習慣の改善を図り、高血圧や脂質異常症、糖尿病等による動脈硬化を引き起こさないようにすることが重要です。
慢性気管支炎・肺気腫・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
これらは主に喫煙習慣により、有害物質を長期間にわたって吸入し続けることによって、肺に慢性的な炎症を起こし、肺機能が低下してしまう病気です。現在は禁煙していても、過去の喫煙歴が影響して、肺機能が低下する場合もあります。
喫煙によって有毒なガスを吸い続けると、炎症を起こして気管支が閉塞する「慢性気管支炎」となり、呼吸困難を発症しやすくなります。さらに気道の先端にある肺胞が破壊される「肺気腫」となると、酸素を吸入し、二酸化炭素を排出する「ガス交換」の効率が低下します。
この「慢性気管支炎」と「肺気腫」が続いている状態を「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」と呼びます。慢性閉塞性肺疾患が続いていると、肺機能が低下し続け、呼吸不全に至ることがありますので、まず禁煙し、早期に治療を開始することが重要です。
大腸がん
大腸の内側の粘膜に発生するのが大腸がんです。偏った食生活、運動不足、過剰な飲酒、喫煙などの生活習慣が大腸がんのリスクを高めると言われていますが、近年では食生活の欧米化による動物性脂肪接種の増加により、大腸がんが増加傾向にあると言われています。
動物性脂肪を摂取すると、消化を助ける胆汁酸の分泌が増加します。すると胆汁酸の変質が起こり、その中に発がん性物質あり、大腸の粘膜にがんが発生すると考えられています。大腸がんは初期にはあまり自覚症状がないため、定期的に検査をすることが大切です。
大腸がんは良性のポリープが大きくなる過程で、がん化するものがあります。下部消化管内視鏡検査(大腸カメラ)でポリープが発見された場合、ポリープの段階で切除することにより、大腸がんを予防することが可能です。
アルコール性肝疾患(脂肪肝・肝炎・肝硬変等)
アルコール性肝疾患とは、長期(通常は5年以上)にわたる過剰な飲酒の習慣が、主な原因と考えられる肝臓の病気です。基本的にアルコールはヒトの体にとっては不要なものとして肝臓で処理されます。長期にわたって肝臓に負担がかかることで肝臓に障害が現れます。
多くの場合、まず肝臓に脂肪が蓄積し「アルコール性脂肪肝」になります。この段階ではあまり自覚症状はありませんが、さらに飲酒を続けると「アルコール性肝炎」を発症し肝臓の細胞の破壊が進行します。人によっては、腹痛や発熱、黄疸などの症状が現れます。
さらに飲酒を続けると、肝臓が線維化して(アルコール肝繊維症)硬くなり、最終的に「アルコール性肝硬変」になります。肝臓の機能が失われ、肝臓がんや肝不全の危険性が高まります。この段階では、アルコール依存症になってしまっている場合も少なくありません。
当クリニックでの生活習慣病への取り組み
生活習慣病ドッグ(健康診断・血管ドッグ)にて身体の状態のチェックと運動療法にて日常生活を見直すことを行います。